ここは2036?~007~
ここは2036?~007~
今日のお空は暗くて、ピカピカーって光ってる日。
お空の上で、誰かがバトルしてるのかな?
◇◇◇
こんにちは、ハーだよ♪
今日はマスターがお休みの日。
お休みの日は、みんなでお散歩するんだけど...。
今日のお空は、暗くて、ゴロゴロ音が鳴ってるの。
こんな日は決まって、雨が降るの。
マスターが教えてくれたんだけど、今は"ツユ"っていう時期で、今日みたいなお空と雨がずっと続くんだって。
ハーは雨が嫌い。
だって、お散歩はできないし、マスターが買ってくれたお洋服が濡れちゃうから。
◇◇◇
ハーはいまね、窓の隅にできた水玉を指でなぞってお絵かきしてるの。
こっちがマスターで、こっちがお姉ちゃん。
あとはハーとイッチーも描いて完成。
みんなでお散歩してる絵にするんだー。
『ハー、なに描いてるの?』
お姉ちゃんがメモを取りながら、ハーの絵を見に来たの。
お姉ちゃんが持ってるあのメモは"かけーぼ"っていって、マスターの生活に欠かせないものなんだって。
むつかしい計算が書いてあってハーにはよく分からないけど、マスターは"ろ〜ひ"っていうのが多いから、お姉ちゃんがしっかりしてないとダメなんだって。
ハーはお姉ちゃんに絵の説明をすると、お姉ちゃんは首を傾げて言ったの。
『これ、ハーじゃないの?』
『わふ、わふふー?(これ、お姉ちゃんだよ?)』
『ハーは本当に優しい子だねぇ』
お姉ちゃんがハーの頭を撫でてくれてるけど、なんで撫でてくれてるかよくわからない。
でも、撫でられるの気持ちいいからなんでもいいや♪
ハーは撫でられながら、お絵かきの続きをしようとしたときーー
ドーン!
『わふっ!?』
急にお空がピカピカって光って、何か爆発したような音がしたの。
慌てて隠れるものがないか探して、近くにちょうどあったのはーー
『ハー!?ちょ、スカートの中に入っちゃダメッー!』
お姉ちゃんのスカートの中。
あ、お姉ちゃん今日は白なんだ。
ハーは白いの好きだけど、この前の黄緑色の方がもっと好きだよ?
『...ハーって、もしかして雷が怖いの?』
『わふー?(かみなり?)』
『雷はね、空に電気が流れる現象のことだよ』
『わふわふー?(誰かがバトルしてるの?)』
『ううん、雷は空が勝手に電気を起こしてるんだよ』
お姉ちゃんのスカートから顔を出してお空を見ると、まだピカピカ光ってる。
『わふ、わふー...(ハー、あれ嫌い...)』
あの光を見ると、急に胸がキューンって苦しくなるの。
ピカピカ、チカチカ。
『ハー?』
ドーン!
『わ...わふ...(マ...スター...)』
胸が、苦しいの...。
◇◇◇
ハーの様子がおかしくなったのは、2回目の雷が落ちてからでした。
ハーが私のスカートから顔を出して間も無く、急に倒れたのです。
『ハー!?どうしたの、ハーッ!?』
私の呼びかけに応答がなく、瞳が虚空を見つめるまま。
これは、一目でわかる異常事態。
すぐさま、私は自分のシステムからハーのステータスにアクセスしました。
ーーが、何度もアクセスを行おうとも、リンクが切断状態で確認できず。
なにが起こったにか検討がつかないため、私はマスターを呼ぶことにしました。
『マスター!マスター!!』
程なく、厨房で昼食の準備をしていたマスターが部屋にやってきました。
「ハウリン、どうしたの?」
『ハーが、急に動かなくなったんです!』
マスターが急いで私たちの側に寄り、ハーを両手で包むように持ち上げましたが、やはり反応がないまま。
「今は雷が落ちてるから、ノートパソコンで状態を確認してみよう」
◇◇◇
私がハーのクレイドルをノートパソコンに接続し、マスターはハーをそっとクレイドルに寝かせてあげました。
それから素体とCSCの状態を確認する為、パソコンを使って診断プログラムを走らせます。
5分後、診断プログラムを走らせた結果がパソコンのディスプレイに表示されました。
「CSCに強い負荷がかかって緊急停止したのか…」
『ハーは大丈夫なんでしょうか...』
「すぐに起動するのは可能だけど、何が原因で止まったのかが分からないんだよね...」
私は、ハーが止まったときの状況を説明しました。
「雷に何か原因があるのかな?」
『驚いたから停止、というのは神姫の仕様上あり得ませんし...』
「...CSCの記憶領域を覗いてみようか」
『マ、マスターはいいですが、私は遠慮します』
神姫にとってCSCは心を司る重要なパーツです。
その記憶領域を確認するということは、心を覗くようなもの。
持ち主であるマスターが確認するのはいいとしても、私が見るのは流石に気が引けます...。
私はパソコンから離れようとしましたが、マスターに引き止められました。
「ハウリンの気持ちは分かるよ。
でも神姫の仕様に疎い僕じゃ気づかないこともあるから、ハウリンに見てもらいたい」
『し、しかし…』
「…ハーを助けてくれないかな?」
『...分かりました』
気が引けますが、マスターの頼みと、可愛い妹の手助けになるのなら…。
早速、パソコンからハーのCSCにアクセスする準備にかかります。
マスターがパソコンでパスワードを入力し、記憶媒体のプロテクトを解除していきます。
5分ほどマスターと二人でCSCの記憶領域をチェックし始めたところ、マスターが何かに気づきました。
「…何かの記録が復旧されてる?」
それは、断片化された映像ファイルでした。
『再生された時間は、ハーが倒れた時間ピッタリですね』
「断片化されてるけど、再生は可能か…」
『これが原因ですよ、きっと。確認しましょう』
私は再生ソフトを起動し、映像ファイルを再生しました。
◆◆◆
『わふ?』
「ご...んね?」
『わふ...』
「泣かなーーで...素敵なーー見つけてあげるから」
『わふー!』
「痛ーーそんなに強く叩いたら腕が壊れーー」
『わふぅ...』
「ごめんね...さよなーー」
◇◇◇
パソコンに表示された映像は、やはり断片化されているため乱れていましたが、なんとか確認することができました。
『映っていた人、マスターではありませんでしたね...』
「そもそも、この映像の内容って...」
『ハーが捨てられる前の記憶でしょうか...』
私は、ハーが捨てられていた時のことを思い出しました。
あのときのメンテナンスオイルの供給量の不足と、両手の関節の磨耗…。
あれは、ハーの流した涙と、前のマスターから離れるのを嫌がったハーの抵抗による損傷だったのでしょう。
『ハーは、何でこの記憶を呼び戻そうとしたのでしょう?』
「戻りたいのかな、前のマスターの元に…」
私は、何も言えませんでした。
私だったら、自分を捨てたマスターの元になんて戻らない...と思います。
しかし、ハーの答えは...。
『とにかく、この映像ファイルがCSCに負担をかけていると思われます。
何かしらの処置はした方が良さそうです』
「...わかった。
じゃあ、このファイルを読み込めないようプロテクトをかけとこう」
『…削除しないんですか?』
「この記憶が復旧されたってことは、どこかでハーが前のマスターの所に戻りたいって証拠だからね。
どうしてもハーが戻りたいと言い出したら、そのときに見せてあげないと…」
マスターとしてハーを幸せにできなかった悲しみ、マスターとして認められなかった悲しみ、そんな思いだったのでしょうか?
その時のマスターの表情は、とても悲しそうでした…。
◇◇◇
あれからハーの再起動が行われ、普通の生活が戻るかと思われました。
しかし、雷が鳴るたびに緊急停止がかかり、なぜかあの映像ファイルのプロテクトが解除されていたり。
さらに、マスターの呼びかけに応えなかったりと、日が進むにつれハーの調子は悪くなる一方でした。
マスターも対処してはいましたが、根本的な解決にはなるはずもなく...。
そしてーー
「ハウリン、僕はハーにあの映像を見せようと思う」
ある日、マスターはハーに映像を見せる決断をしました。
私は断る理由がないので、頷くだけでした。
私はハーを呼びに、クレイドルへと近寄りました。
そして、事件は起きたのです。
『マスター!ハーが居ません!!』
今日のお空は暗くて、ピカピカーって光ってる日。
お空の上で、誰かがバトルしてるのかな?
◇◇◇
こんにちは、ハーだよ♪
今日はマスターがお休みの日。
お休みの日は、みんなでお散歩するんだけど...。
今日のお空は、暗くて、ゴロゴロ音が鳴ってるの。
こんな日は決まって、雨が降るの。
マスターが教えてくれたんだけど、今は"ツユ"っていう時期で、今日みたいなお空と雨がずっと続くんだって。
ハーは雨が嫌い。
だって、お散歩はできないし、マスターが買ってくれたお洋服が濡れちゃうから。
◇◇◇
ハーはいまね、窓の隅にできた水玉を指でなぞってお絵かきしてるの。
こっちがマスターで、こっちがお姉ちゃん。
あとはハーとイッチーも描いて完成。
みんなでお散歩してる絵にするんだー。
『ハー、なに描いてるの?』
お姉ちゃんがメモを取りながら、ハーの絵を見に来たの。
お姉ちゃんが持ってるあのメモは"かけーぼ"っていって、マスターの生活に欠かせないものなんだって。
むつかしい計算が書いてあってハーにはよく分からないけど、マスターは"ろ〜ひ"っていうのが多いから、お姉ちゃんがしっかりしてないとダメなんだって。
ハーはお姉ちゃんに絵の説明をすると、お姉ちゃんは首を傾げて言ったの。
『これ、ハーじゃないの?』
『わふ、わふふー?(これ、お姉ちゃんだよ?)』
『ハーは本当に優しい子だねぇ』
お姉ちゃんがハーの頭を撫でてくれてるけど、なんで撫でてくれてるかよくわからない。
でも、撫でられるの気持ちいいからなんでもいいや♪
ハーは撫でられながら、お絵かきの続きをしようとしたときーー
ドーン!
『わふっ!?』
急にお空がピカピカって光って、何か爆発したような音がしたの。
慌てて隠れるものがないか探して、近くにちょうどあったのはーー
『ハー!?ちょ、スカートの中に入っちゃダメッー!』
お姉ちゃんのスカートの中。
あ、お姉ちゃん今日は白なんだ。
ハーは白いの好きだけど、この前の黄緑色の方がもっと好きだよ?
『...ハーって、もしかして雷が怖いの?』
『わふー?(かみなり?)』
『雷はね、空に電気が流れる現象のことだよ』
『わふわふー?(誰かがバトルしてるの?)』
『ううん、雷は空が勝手に電気を起こしてるんだよ』
お姉ちゃんのスカートから顔を出してお空を見ると、まだピカピカ光ってる。
『わふ、わふー...(ハー、あれ嫌い...)』
あの光を見ると、急に胸がキューンって苦しくなるの。
ピカピカ、チカチカ。
『ハー?』
ドーン!
『わ...わふ...(マ...スター...)』
胸が、苦しいの...。
◇◇◇
ハーの様子がおかしくなったのは、2回目の雷が落ちてからでした。
ハーが私のスカートから顔を出して間も無く、急に倒れたのです。
『ハー!?どうしたの、ハーッ!?』
私の呼びかけに応答がなく、瞳が虚空を見つめるまま。
これは、一目でわかる異常事態。
すぐさま、私は自分のシステムからハーのステータスにアクセスしました。
ーーが、何度もアクセスを行おうとも、リンクが切断状態で確認できず。
なにが起こったにか検討がつかないため、私はマスターを呼ぶことにしました。
『マスター!マスター!!』
程なく、厨房で昼食の準備をしていたマスターが部屋にやってきました。
「ハウリン、どうしたの?」
『ハーが、急に動かなくなったんです!』
マスターが急いで私たちの側に寄り、ハーを両手で包むように持ち上げましたが、やはり反応がないまま。
「今は雷が落ちてるから、ノートパソコンで状態を確認してみよう」
◇◇◇
私がハーのクレイドルをノートパソコンに接続し、マスターはハーをそっとクレイドルに寝かせてあげました。
それから素体とCSCの状態を確認する為、パソコンを使って診断プログラムを走らせます。
5分後、診断プログラムを走らせた結果がパソコンのディスプレイに表示されました。
「CSCに強い負荷がかかって緊急停止したのか…」
『ハーは大丈夫なんでしょうか...』
「すぐに起動するのは可能だけど、何が原因で止まったのかが分からないんだよね...」
私は、ハーが止まったときの状況を説明しました。
「雷に何か原因があるのかな?」
『驚いたから停止、というのは神姫の仕様上あり得ませんし...』
「...CSCの記憶領域を覗いてみようか」
『マ、マスターはいいですが、私は遠慮します』
神姫にとってCSCは心を司る重要なパーツです。
その記憶領域を確認するということは、心を覗くようなもの。
持ち主であるマスターが確認するのはいいとしても、私が見るのは流石に気が引けます...。
私はパソコンから離れようとしましたが、マスターに引き止められました。
「ハウリンの気持ちは分かるよ。
でも神姫の仕様に疎い僕じゃ気づかないこともあるから、ハウリンに見てもらいたい」
『し、しかし…』
「…ハーを助けてくれないかな?」
『...分かりました』
気が引けますが、マスターの頼みと、可愛い妹の手助けになるのなら…。
早速、パソコンからハーのCSCにアクセスする準備にかかります。
マスターがパソコンでパスワードを入力し、記憶媒体のプロテクトを解除していきます。
5分ほどマスターと二人でCSCの記憶領域をチェックし始めたところ、マスターが何かに気づきました。
「…何かの記録が復旧されてる?」
それは、断片化された映像ファイルでした。
『再生された時間は、ハーが倒れた時間ピッタリですね』
「断片化されてるけど、再生は可能か…」
『これが原因ですよ、きっと。確認しましょう』
私は再生ソフトを起動し、映像ファイルを再生しました。
◆◆◆
『わふ?』
「ご...んね?」
『わふ...』
「泣かなーーで...素敵なーー見つけてあげるから」
『わふー!』
「痛ーーそんなに強く叩いたら腕が壊れーー」
『わふぅ...』
「ごめんね...さよなーー」
◇◇◇
パソコンに表示された映像は、やはり断片化されているため乱れていましたが、なんとか確認することができました。
『映っていた人、マスターではありませんでしたね...』
「そもそも、この映像の内容って...」
『ハーが捨てられる前の記憶でしょうか...』
私は、ハーが捨てられていた時のことを思い出しました。
あのときのメンテナンスオイルの供給量の不足と、両手の関節の磨耗…。
あれは、ハーの流した涙と、前のマスターから離れるのを嫌がったハーの抵抗による損傷だったのでしょう。
『ハーは、何でこの記憶を呼び戻そうとしたのでしょう?』
「戻りたいのかな、前のマスターの元に…」
私は、何も言えませんでした。
私だったら、自分を捨てたマスターの元になんて戻らない...と思います。
しかし、ハーの答えは...。
『とにかく、この映像ファイルがCSCに負担をかけていると思われます。
何かしらの処置はした方が良さそうです』
「...わかった。
じゃあ、このファイルを読み込めないようプロテクトをかけとこう」
『…削除しないんですか?』
「この記憶が復旧されたってことは、どこかでハーが前のマスターの所に戻りたいって証拠だからね。
どうしてもハーが戻りたいと言い出したら、そのときに見せてあげないと…」
マスターとしてハーを幸せにできなかった悲しみ、マスターとして認められなかった悲しみ、そんな思いだったのでしょうか?
その時のマスターの表情は、とても悲しそうでした…。
◇◇◇
あれからハーの再起動が行われ、普通の生活が戻るかと思われました。
しかし、雷が鳴るたびに緊急停止がかかり、なぜかあの映像ファイルのプロテクトが解除されていたり。
さらに、マスターの呼びかけに応えなかったりと、日が進むにつれハーの調子は悪くなる一方でした。
マスターも対処してはいましたが、根本的な解決にはなるはずもなく...。
そしてーー
「ハウリン、僕はハーにあの映像を見せようと思う」
ある日、マスターはハーに映像を見せる決断をしました。
私は断る理由がないので、頷くだけでした。
私はハーを呼びに、クレイドルへと近寄りました。
そして、事件は起きたのです。
『マスター!ハーが居ません!!』
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