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ここは2036?~002~

ここは2036?~002~

ハウリンと僕が公園で見つけた箱、その中身は神姫だった。

「ハウリンと、同型の神姫…?」
『捨て犬、ではなく捨て神姫?いえ、犬型なので捨て犬でも…』
そういうと、ハウリンは頬に手を当てて考え始めた。
「ハウリン、そこは考えることじゃないと思うよ?」
僕は箱に入っている神姫を手に取ってみる。
「…特に目立った損傷ないけど、起きないなぁ。バッテリー切れかな?」
『いえ、箱の中を見てください』
箱の中にはハウリンの標準武装一式と、CSCが入っていた。

CSCを簡単に説明すると、神姫の心となるパーツだ。
見た目こそ小さな球体の宝石だけど、見た目以上に高度な情報処理を行える電子部品の一種だ。

僕は手に持った神姫の胸パーツを持ち上げると…
『…マスターのエッチ』
誤解が生まれた。
「ハ、ハウリン、これは違うよ!?CSCが入ってるか確認するだけだよ!?」
ハウリンに冷たい視線を送られながらも、僕は胸パーツを外す。
すると、左胸に小さな丸い穴が三つ空いていた。
『CSCがセットされていませんね…』
「CSCが無いと初期化されてる…んでいいんだっけ?」
『はい。人間で言うなら心臓を取られたようなものです』
「その例えはやめようよ、せめて心を失ったとかさぁ…」
僕は胸パーツを閉じ、神姫を箱に戻した。
『マスター、この子どうしましょう…』
「ウチにはもう一匹いるでしょう?」
『犬扱いですか!?』
だって犬型ですし、というと話が進まなくなるので少し考えることにした。
「捨てられてるってことは、故障してるってことも考えられるね」
『メンテナンスチェックのプログラムを起動すれば解りますが…』

プログラムを起動するには、パソコンが必要になる。
いま持っている携帯端末からは起動は不可能だ。
「一度家に持ち帰らないと分からないか…」
『…持ち帰るんですか?』
「他の子がウチに来るのはイヤ?」
『いえ、そうではなくて。もう犬型神姫をが一体居るから不要なのかと…』
「でも、ハウリンはそう思ってないんでしょ?」
『マスター…』

◇◇◇

部屋に戻ると、僕は箱から神姫とクレイドルを取り出した。
彼女をクレイドルに寝かせると、棚からノートパソコンを取り出す。
『なんでメインのディスクトップではなく、サブのノートパソコン何ですか?』
「パソコンのデータを狙った罠とかも考えられるからね」
『なるほどー』
クレイドルから出るケーブルを、ノートパソコンに接続する。

ちなみに、クレイドルの接続が正しくセットされた確認が取れると、クレイドル側から各種のプログラムが送られてくる。
ネットを使ったりディスクからダウンロードする必要はないのだ。

各種のプログラムの中から、メンテナンスチェックとパラメータチェックを選択し起動する。
『初期化されてるならチェックはすぐ完了するはずですが…』
ハウリンの言うとおり、チェックはすぐ完了した。
「データはちゃんと初期化されてる。ただ…」
ボディのデータを確認すると、2つレッドのチェックがかかっている。
『メンテナンスオイルの供給量の不足と、両手の関節が摩耗してますね…』
「メンテナンスオイルは"万能ジェリカン"があったよね?」
そういうと、ハウリンが棚に閉まってあるメンテ用のヂェリカンの数を確認しに行く。

ヂェリカンとは神姫用の栄養剤のようなもで、外観はボトル型をしている。
種類は様々で、中の液体によって様々な効果が得られる。

なかでも"万能ヂェリカン"は新型のメンテナンスオイルだ。
中身は粘性のある白い液体で、見た目は他のヂェリカンと差異はない。
しかし、このヂェリカンは電圧のかけ方でオイルの性質が変わる。
電圧が低いと粘度が高く、関節などの潤滑オイルに。
電圧が高いと粘度が低く、カメラアイの洗浄オイルに変化する。
用途別に分けてヂェリカンを準備する必要もなく、飲む神姫にも負担が減る。
正式名は違うものも、僕ら神姫オーナーの間ではその使いやすさから"万能ヂェリカン"と呼んでいる。

ちなみに、ハウリンはイチゴ牛乳味のヂェリカンが好きで、それ以外は飲もうとしない。
以前に店頭で貰った試供品の梅味のヂェリカンを渡したら、凄く怒られたことがあった。

『えーと、4本残ってますね。…だいたい2ヶ月分ですね!』
「ハウリンはバトルしないんだから1ヶ月に1本でしょ?好きだからって飲み過ぎはダメだよ」
『むー』
膨れるハウリンを横目に、パソコンをチェックする。
「オイルはあるとして、問題は手の関節か…」
『直せますよね?』
「直すより交換した方が楽だし、手間もかからないよ。でも、今は予備がないからショップに行かなきゃ」

◇◇◇

神姫ショップに着くと、さっそく備品売り場へ足を運ぶ。
『マスター、コレですよ』
「えーと…けっこうな値段だね」
手持ちが足りない、という訳ではない。
ただ、この後にハウリンと買う約束してた洋服分があるので、それを考えると資金繰りが厳しい。
もちろん、あの子を直してあげたい気持ちはある。
だけど、ここまで来てハウリンを悲しませたくはない。

僕が答えを出そうとしたとき、ハウリンが僕より先に答えを出した。
『…マスター、私の服は諦めますので、あの子を直してくれませんか?』
「…ハウリンは、それでいいの?」
ハウリンは無言でうなずいて、僕の答えを待った。

僕は正直、驚いた。
ハウリンは意地っ張りで頑固な性格で、コレと言ったら答えを変えない子だ。
今回の服だって、前からどれが欲しいのか決めてて、僕が別の服に変えようとしても聞こうとしなかったほどだ。
それが、いまは他の神姫のために答えを変えたのだ。

僕は棚からパーツを取り、買い物カゴに入れた。
「…僕は、ハウリンを選んで本当に良かったよ」
『私も、私のマスターが、マスターで良かったと思ってます』
嬉しそうに答えるハウリンは、悲しむどころか、笑顔でいっぱいだった。

◇◇◇

家に帰るなり、僕はすぐにパーツの交換をした。
そして、CSCをセットし、再チェックをかける。
「…よし、これで完了っと」
『私の方も完了ですよ』
そういうハウリンは、眠っている神姫のボディーの手入れをしていた。
「何してるかと思ったら、ボディを拭いてたのか」
『新品同様、ピッカピカですよー』
確かに、ボディは光が反射するほどピカピカだ。
代わりに、ハウリンのボディは少しくすんでしまっている。
「僕もハウリンを拭いてあげるよ」
『い、いいですよ!自分でやりますから!!』
ハウリンは頬を染めながら、照れ隠しに自分の体を拭き始める。

そんなやり取りをしているうちに、再チェックが終わった。
ディスプレイの表示は正常を示すオールグリーンで、セットアップ完了の文字が点滅している。
後はエンターキーを押すだけで、この神姫は起動する。
「…起動するけど、いいよね?」
ハウリンは無言で頷き、寝ている神姫を見守る。

僕は、エンターキーを押した。

神姫からキューン、と起動音がしてボディがピクリと動く。

寝ていた神姫がゆっくりと目蓋を開き、目の前の僕を見上げる。

そして、第一声が…

『わふわふ?』

この言葉だった。
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のーたいとる

`)初期不良での言語回路故障…いい
は「ますたーも意思疎通不能に…」
`)はうりん?

No title

初期不良?
ふふ、それはどうでしょう…
プロフィール

霧ヶ咲 こかげ

Author:霧ヶ咲 こかげ
GUNMAに住む隠れ武装紳士。
部屋を片付けても、神姫の箱に占領される一方。

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